火鉢の中のビオトープ
このビオトープは、ささやかな前庭(と言っても、裏庭があるわけではないが)の一角に置いた古い火鉢の中に在る。
私が子供だった昭和30年代には、この火鉢も立派な暖房器具だった。
毎朝母親が、私たちを起こすよりも先に炭を起こした。五徳を置いた上には普段は南瓜のような南部鉄瓶が乗っていて、柔らかそうな湯気を上げているのを眺めるのが好きだった。時々鉄瓶を下ろし、餅を焼いたりもした。
炭は毎年暮れ前に炭屋から俵で買っていた。灰を作る都合上、俵でなくてはならない。その調達が困難になるのに伴い、本来の火鉢としての使命は終えたが、その後しばらくは練炭七輪の入れ物として使われていた。
このビオトープは結果的にそうなったのであって、最初の意図は違っていた。
とにかく睡蓮を育てたかった。容れ物の大きさに合わせて姫睡蓮にした。蚊の繁殖池にしないためメダカを、少しこだわってクロメダカを数匹買ってきて放った。最初のうちはボウフラも湧かないだろうからと、市販のメダカの餌を与えてみたが、見向きもされない。今思えば、姫睡蓮の鉢の土の中に微生物が居て、それが水中に出てきたところを捕食していたのかもしれない。どちらにしても、餌をやっても水を汚すだけなので放って置いた。暫くして、世間ではこういったものをビオトープと呼ぶのだと気づき、そう言う事になった。
夏、メダカは繁殖して数を増やすが、秋以降徐々に数が減っていく。5年間これをやっていて、春に手入れをする時全滅している年もあれば数匹越冬している年もあった。全滅したり生き残りが余りにも少ない年は、新たな移民を入れた。今年の生き残りは3匹。雌雄判別に自信が無いので、このままでは1/4の確率で繁殖不可能になることを承知しつつ、ギャンブルを打った。今のところ生存者は居るようだが、姫睡蓮の繁茂が著しいので、正確な数はわからない。
メダカの他に、不法移民が居たりするので、結構楽しい。
毎年、ではないが、ヤゴが底に潜んでいたりする。蜻蛉の産卵場所も、この近所では限られているようだ。
始めたころ何回か布袋葵(ホテイアオイ)を入れた年があり、このときはウキクサがお供に付いてきたし、卵が混入していたのだと思うのだが、7mmくらいの小さな巻貝が多数発生したりもした。布袋葵は英名Water hyacinthの通りのきれいな花が咲くが、繁殖力が強烈で、ひと夏の内に分かれた株を何回も処分しなくてはならない。今は姫睡蓮が十分繁殖し、布袋葵が入る水面は無い。
姫睡蓮は、状態がよければ8月末頃まで花をつける。最初の年は一夏通して2輪しか咲かなかった。一番多かった年は夏の間ほぼ毎日花が咲いている状態が続いたので、毎週2輪ずつとして、夏の間の2ヶ月で10輪近く咲いた計算になる。今年はどうだろう。
来年の春まで、異常渇水時に水を補給してやる以外は自然任せが方針だ。メダカたちは繁栄しているだろうか。
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