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2009年7月31日 (金)

「エンジニア」==「技術者」?

日本ではそう言う事らしい。日本語版Wikipediaの「エンジニア」の項、冒頭に;

エンジニア(えんじにあ、Engineer)とは、日本では技術者の別称。

と明記されている。広辞苑にも同様の記述がある。実際、「xxエンジニア」を「xx技術者」と言い換えても、またその逆をやっても、日本語としては破綻しそうもない。

しかし、自身をエンジニアだと思っている私には、全ての「技術者」がすなわち「エンジニア」であると考えるには相当な違和感がある。これについて一言触れておくべきだと思っていた。

少々気になったので、同じ日本語版Wikipediaで「技術者」の項を見ると、「エンジニアとは呼ばない技術者」の存在を示唆する表現が在るではないか・・・!

2009/7/31現在、日本語版Wikipediaの「技術者」の項は、次のように始まっている;

技術者(ぎじゅつしゃ)とは、基礎となる学問や知識を具体的なものづくりやプロセス、システムの開発に応用する専門家のこと。

理学(数学・物理学など)・工学(機械工学・電子工学・情報工学など)分野の知識を基礎とし、有用な物や工程・システムを設計・開発する人は特にエンジニアとも呼ばれる。(以下省略)

2番目の段落の冒頭で、「技術者の一部はエンジニアとも呼ばれる」旨、明記されている。明らかな内部矛盾だが、Wikipediaの性格上致し方無い所だろう。この部分は、英語版Wikipediaの”Engineer”の項の冒頭(以下に引用)に合わせたものかもしれない。

An engineer is an engineering professional with an approved degree in engineering. Engineers are concerned with developing economical and safe solutions to practical problems, by applying mathematics and scientific knowledge while considering technical constraints.
著者訳:エンジニアとは、承認されたエンジニアリング(工学)の学位を有し、エンジニアリングを業とする者である。エンジニアは、技術的制約を考慮しつつ数学と自然科学の知識を応用して、現実的な問題に対する経済的かつ安全なソリューションの開発に携わる。

2番目の文章で、『エンジニアリングとは何か』が簡潔に説明されているが、この点をもう少し詳しく見てみよう。英語版Wikipediaの”Engineering”の項の冒頭を以下に引用する;

Engineering is the science, discipline, art and profession of acquiring and applying technical, scientific and mathematical knowledge to design and implement materials, structures, machines, devices, systems, and processes that safely realize a desired objective or inventions.
著者訳:エンジニアリングとは、ある望ましい目的または発明を安全に実現するように、材料、構造、機械、装置、システム、およびプロセスを設計して実装するための、技術的、科学的、および数学的知識を習得して応用する科学、訓練、技(わざ)、そして知的専門職である。

訳がこなれていないのはご勘弁願いたい。

日本語版で言及されている「理学」は自然科学と数学であり、「工学」は自然科学の派生物なので、英語版の2つを合わせると日本語版の2番目の段落の内容にほぼ等しい。

再びここでどんでん返し。日本語版Wikipediaの「技術者」の項を表示した状態で、画面左の「他の言語」ペインでEnglishを選ぶと、英語版Wikipediaの”Engineer”の項にリンクしている。ここで”languages”ペインで「日本語」を選ぶと元に戻る。完全に「エンジニア」==「技術者」が前提になっている・・・。

ここで、私が大きな勘違いをしていたらしいことに気づいた。エンジニアであるかどうかと言うことは、日本の内外問わず、恐らく人の属性である。この点は、私と世間の認識にずれはないように思える。技術者については、私は人の属性だと思っていたのだが、今の日本の世間の認識は業務またはタスクの属性であって、それに従事している人が「技術者」と言うことらしい。しかし、これには解決しなければならない矛盾が一つある。日本語版Wikipediaの「技術者」の項にから引用した中に在る「専門家」のキーワードは、「技術者」が人の属性であることを強く示唆しているからだ。

ここまで来ると、私が違和感を抱いた根源的なこと、IT業界における「人」と「ビジネス」について語らなければならないだろう。かなり気の滅入る話になりそうなので、次回。

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