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2009年8月15日 (土)

「静か過ぎるハイブリッド車に音出し装置」議論を嗤う

2009年8月13日の朝日新聞朝刊第11面・『声』(読者の投稿)欄に、中村哲也と言う人が以下のような投稿をしている。

『HVの音より まず法律守れ』
モーターで動くハイブリッド車(HV)が視覚障害者には静かすぎて危険なため音が必要との議論や対応策の取り組みが始まった。しかし、前提が違いはしないか。自動車が歩行者をないがしろにするような違法状態の解消を忘れていることが気になる。(以下略)

一つの正論だろう。『静かすぎるから音を出せ』と言う発想に基づきチャイムのような音を鳴らすのは、ベルを鳴らしながら歩行者を蹴散らすように歩道上を走る自転車を連想させ、滑稽である。

滑稽さの背景は、この件は最適な解(ソリューション)を含め、米国では一定の方向性が既に出ている事である。

「日経サイエンス(Scientific American日本語版)」2008年11月号(9月25日発売)の『News Scan』欄19~18ページに「フィールドノート 近づいているのが聞こえない ハイブリッド車には接近を知らせる人工音源が必要?」の題で記事が載せられている。

この記事によれば、米国自動車技術者協会(SAE)は2007年11月にこの問題を検討するための特別委員会を設置し、2008年4月には同様な問題に取り組むための法案が連邦議会議員により提出され、6月には米運輸省道路交通安全局(NHTSA)がこの問題に関する公聴会を開いたそうだ。また、カリフォルニア州サンタクララにあるエンハンスト・ビークル・アコースティック社は、後付できる接近音発生装置を395ドルで売り出す計画を持っている。同社のマイヤー(Everett Meyer)は言う。

歩行者に注意を促す最良の音は、自動車らしい音だろう。穏やかなエンジン音やタイヤ音のような音だ。

あえて議論や実験をするまでも無く、誰もが納得できる結論だと思う。同社の装置は、車の走行速度に応じてピッチが変わり、時速30km以上では音が止まる。これ以上の速度になると、通常のエンジンを積んだ車でも、歩行者に聞こえるのは風切り音やタイヤ音がほとんどで、エンジン音は無視できるからだ。

以上、米国の状況から分かる事は、対歩行者事故の加害者となるリスクを低減できるなら395ドル程度は払ってもかまわないとハイブリッド車オーナーたちは考えているはずだ、と言うマーケティングまで行われていることである。ただし現実には、不況のあおりで製品化は進んでいない様である。

この問題の日本における滑稽さ、と言うか、怪しさは、米国では一昨年から民間(SAE)→議員→役人、と言う流れで話が進んでいた所に、日本では総選挙を控えたタイミングで真っ先に役人が声を上げた、と言う事である。米国では既にSAEやNHTSAが動いているのだから、自動車業界や国交省の担当部署はその事実を押さえていたはずであるにもかかわらず、日本のマスコミ報道を見る限り、国交省がこの件に世界で初めて問題意識を持ったが如く報じられている。何かを国民の目から隠したがっているような、いやな感じがする。

またこれら報道に『国交省は有識者、警察、自動車業界や、目の不自由な人びとや消費者の代表ら13人による「ハイブリッド車等の静音性に関する対策検討委員会」を立ち上げた』とあるが、この委員会で米国の事例を踏まえた上で議論が行われるのだろうか。甚だ心許ない。お願いだから、TV報道されたチャイムのような音の出る車だけは勘弁して欲しい。あれは悪夢だし、世界の笑いものだ。

最初に紹介した中村哲也の投稿に「違法状態の解消を忘れている」とあるが、それは認識が違うと思う。彼らは意図的に、管理された違法状態を維持していると考えたほうが合理的だ。日本は主権在民・法治国家と言われているが、そうすることで彼らの裁量が現実を決めることになり、また「誰でもしょっ引けない奴は居ないし、誰でも叩けば埃が出る」と豪語させる土壌を作っていると考えたほうが、目にする現実と辻褄が合う。

2009/8/16追記:
Kaze氏のblog「コンテナ・ガーデニング」からトラックバックをいただいた。こちらの記事に拠れば、英国ロータス社(!)のコンサルティング部門でも私が紹介した米国エンハンスト・ビークル・アコースティック社の事例とほとんど同じ仕組みを似たような時期に開発しているようだ。
それにしても参ったのは、Kaze氏の記事は1年も前のものである事だ。アンテナ感度の良さに敬服である。

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