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2009年8月11日 (火)

今更・・・地デジに釣られた

この秋井貴彦によるココログニュース「民放テレビ、実は国営?」に釣られたようだ。

通常、この種の記事はthruしているのだが、余りの認識の低さに目をとめてしまった。

「秋井貴彦」で検索したら、以前にも同じようなことをしているようだ。この時はライブドアだったが、今回は個人が書いている「はてな」blogの単一記事のみ引用に基づく記事である。

察するところ、秋井貴彦と言う男は「こんな面白いblog記事を見つけました」的な記事を書くのが得意なのだろう。
あるいは、TV等放送メディアでお笑い芸人と同列に扱われている程度の「言論人」に成る事を夢見ているのかもしれない。

少なくとも、欠落している事実関係は補っておこう。

先ず、今回の「地デジ化」の本質は、TV用周波数帯域の削減である。今90-108MHz、170-220MHz、および470-770MHzがTVに割り当てられているが、470-710MHzだけが残る。道路か何かを造るから、平屋住まいしているTV電波を立退かして、高層集合住宅に移転しろ、と言っているのだ。こう考えれば、移転費用をTV事業者が持つ大儀は無い。

同時に、高層集合住宅に移転したTV局をたずねる(視る)ためには、視聴者もBCASカードの入ったTVと言う、エコカーみたいなものに買い換えなければならない。こちらは、ちらほら噂話は出るが、米国が行ったような買い替え費用補助の様な具体的な話は余り聞かない。

私が一番問題だと思っているのは、空いた帯域を何に使うか未だはっきりしていないことである。

710-770Mhzは、ほぼ間違いなく携帯事業者が取るだろう。携帯電話用に最適な波長なので、彼らは喉から手が出るほど欲しいはずだ。彼らがこの周波数帯を手に入れることで、年間1兆円近い売上増と同等の効果につなげられる可能性がある。この意味で、「地デジ化」費用の多くを携帯業界が持つ合理性はある。

しかし、下のほうの周波数(VHF)は携帯事業者にとって魅力が無い。波長が長過ぎるのだ。端末の場合、性能を優先するとワンセグ用よりも長いアンテナが必要だし、基地局のアンテナも巨大化する。

空いたVHF帯について、いろいろな話はある。しかし、未だ「道路か何かを造る」レベルで、はっきりしない。もしかすると、許認可権を持つ総務官僚に腹案があるかもしれないが、政権交代後を見据えて、明らかにしていない可能性がある。新政権との取引材料になるかもしれない、と。この点、総選挙を控え、発表された各党のマニュフェストに何か言及されていた記憶は無い。

『地デジ化で空いたVHF帯を~に活用することにより、雇用創出xx万人』位の事は言ってほしいものだ。

どの党が政権を取るにせよ、官僚をコントロールしようと言う強い意思(単なる見せ掛け?)はあるかもしれないが、緻密さに欠ける。国民の貴重な財産が、当面更地のまま総務省官僚のオモチャになりかねない。

TV業界の電波使用料の負担が少なすぎる、と言うのが問題の記事その他の論点だったと思う。事実関係を押さえておこう。

TV業界

  • 事業収入(売上)(注1) 3.2兆円
  • 電波使用料(注1)     34.7億円(対売上0.11%)

携帯主要3社(docomo、au、softbank)

  • 事業収入(売上)(注2) 9.0兆円
  • 電波使用料(注1)     685億円(対売上0.76%)

注1:ココログニュース記事および同ソースによる
注2:2007年3月期

上で(注1)と記載した数字は、オリジナルソースが2008年2月の議員ブログなので、恐らく2007年会計度分と思われるため、携帯各社の売上もそれに合わせた。

TV業界は斜陽までは至らずとも、成熟産業である。一方の携帯業界は、伸びが鈍化して入るものの、まだまだ成長分野だろう。売上金額を見ると、行政を別にすれば、国内最大のサービス業セクターではないだろうか。携帯業界において電波使用料が売上原価率として1%程度であり、TV業界との負担割合格差が10倍程度に収まっているのは妥当な範囲だと考える。

何はさておいても、「携帯業界の負担=国民の負担」論は笑止千万である。

民放TV会社が負担すれば、結局それは宣伝広告費として、最終的に消費者向け商品価格に乗っかってくる。更に「皆様のNHK」に至っては、一種の税金であるが如く徴収している受信料から賄われるのだ。何にせよ、国内で消費される商品・サービスに関する投資・費用は、最終的に国民が負担する事になる。

問題は、誰が費用を負担するか、ではない。
国民の資産が、真っ当に国富のために使われるか否かである。
今ですら、電波利権は天下り財源化している。悲しい限りだ。

気がついたら外国の紐のついた会社が電波利権を押さえていたりする事なども避けたい。
電波法の規定で、表立って外資が被認可対象には成れなかったと記憶しているが、闇ではそうなっていないとも限らない。
特にkrとかcnは勘弁願いたい。さすがにkpは在り得ないと思うが。
総務官僚も、そこまで馬鹿ではないだろう。

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コメント

VHFアナログ停止により空いた分は、コミュニティFMに解放されるとも聞き及んでおります。
現在FM放送は76~90で、首都圏では全く余地がありませんから。

投稿: AS | 2010年4月 3日 (土) 18時17分

ASさん、貴重なコメントありがとうございます。
なるほど、その可能性はありますね。
利用可能な受信機との兼ね合いで、TVの1~3CHの周波数(90~108MHz)が割り当てられる、と言うシナリオは充分あり得そうに思えます。

投稿: エンジニア | 2010年4月 4日 (日) 02時23分

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