100円均一商品の実力(1)電球型蛍光灯
その日、スライダーチャック袋を探していた。
リンク先の商品ほど上等ではないが、良く似たものが近所の100円均一ショップ、通称100均に以前置いてあったが、最近は見かけない。仕方が無いので普段は行かない遠方の店を、散歩をかねてのぞいてみたら『それ』があった。
海辺のマックさんから別の記事へのコメントで、ダイソーで100円(税別)の電球型蛍光灯を売っていますよ、と教えていただいていたが、家中のE26口金ソケットは全てLED電球か電球型蛍光灯で埋ってしまっているので、敢えて買いに行こうとは思わなかった。しかし目の前にあると、話は別である。ちなみに、この店はダイソーではない。
近くを見回すと「あれれ、こんなものも100円?」と言うことで、結局\315のお買い上げ、になってしまった。
今回は電球型蛍光灯にふれる。残り二品は、また日を改めて。
仕様
箱の中を改めるのははばかられるので、買う前に確認できるのは外箱の表示である。この商品は「仕様」が記載されていた。
これで気が付くのは、(1)寸法がやたら細長いこと、(2)全光束が白熱電球やメジャーなブランドの電球色電球型蛍光灯(どちらも810lm)の7割程度であること、そして(3)定格寿命がメジャーブランド(6,000h)の半分しかないことである。
しかし、何といっても100円だ。
1桁までではないが、それに近い価格差があると、この程度の違いは問題無さそうに思える。しかし本当にそうだろうか。そう思うからこそ、買って確かめたくなるのだ。
外見
とっても細長い。
「電球型」と呼べる根拠があるなら、唯一E26口金のソケットに刺さることだけだろう。電球と置き換えて使える場所は、相当限られそうである。ただし、この方が好都合、と言う場合もあるかもしれない。
PSEマークはついている。ただしJETは無い。
点灯しても、ほぼマトモである。明るさは全光束の数値並み、フリッカーは感じないし、色合いも電球色の蛍光灯として違和感は無い。
唯一気になったのが、点灯して制御回路が入っている部分の温度が上昇すると「新しい電気製品」の臭いが強く感じられたことだ。焦げているようではないが、「大丈夫かな」と少し心配になる水準である。
エコノミー & エコロジー
一番気になるのがこの部分だ。
総費用に占める電気代の割合が大きいので、消費者サイドのエコノミーとエコロジーは対立しないはずだ。ただし、これらと景気に与える影響はトレードオフになるかもしれない。
100均の電球型蛍光灯(最下段)以外は、全てPanasonicブランドの現行商品である。価格はyodobashi.com調べ、定格はPanasonicのWebカタログ(リンク切れの場合はこちらから入って、中段左寄りの「ランプ総合カタログ」)による。
全費用の「注1」は、LED電球に付き合って40,000時間使用した場合の費用合計である。電球などの交換回数に端数が出る場合も、かまわずそのまま計算している。また、全光束の違いは無視、つまり明るさの差は我慢するシナリオだ。この場合シリカ電球(白熱電球)がダントツに高価だ。これはこの場合に限らず、全ての場合で言えることである。最安はLED電球で、電球型蛍光灯はその5割増~2倍程度だ。100均の方が安い。
全費用の「注2」は、「注1」をベースに、明るさの違いは費用で調整できると想定し、全光束をそろえた場合の理論値である。LED電球と電球型蛍光灯、合計3品目の間の差が縮まり、電球型蛍光灯同士では順位が入れ替わっている。
以上2ケースは、10年~20年の長い間、今と同じ状況が続くことが前提である。この間に状況の変化(たとえば部屋の模様替えで照明器具を替えるとか)があると、寿命の長いものはまだ使えるのに捨ててしまわなくてはならない場合があるかもしれない。このようなリスクを考えて、「注3」に最初の6,000時間(2年弱に相当)の費用を見積もってみた。この場合、100均の電球型蛍光灯が最安になる。ただし、明るさの違いは無視している。
ここまで敢えて触れなかったのが、100均の電球型蛍光灯は本当に寿命3,000時間なのか、ということだ。これは個人的に確かめ様が無い。気になる人は買うべきではないだろう。ただ、仮に短期間で逝ってしまったとしても、たかが100円、されど100円である。
もう少し遊ぼう
これで終わりではつまらないので、デジタルカメラとCDを使って分光分析のようなことをやった結果を紹介する。
日向にCDを置いて、ちょうど良い位置に目を持っていくと、太陽-CD-観察者の位置関係の違いで色並び順や形がちがっているが、CDの上に虹が見える。これを写真に撮ると、こんな感じだ。
中央の三角形の部分は露出オーバーで正しい色が出ていないので、そのすぐ外側で見て欲しい。
肉眼では、もっと滑らかに色が変化しているのが見えるのだが、写真に撮るとRGB(赤緑青)3色の帯が強く、中間色はほとんど見えない。これは3原色分解によるカラー写真の限界だと思う。原色と原色の中間の波長の単色光は正しく表現できない。あるいは、少なくとも普通の写真とこのような写真の色表現は両立できない、と言うべきかもしれない。RAWフォーマットで記録しておいて、現像処理で調整すればもっと自然な感じになったかもしれないが、それだと主観的に都合の良い色を造ってしまうおそれが出てきて、悩ましいところだ。
ただいずれにせよ、分光分析のようなことはできる。
この方法は、光の波長で入射角と反射角の関係が変わる鏡に映った太陽の像を見ているのに相当すると考えられる。通常の鏡と同じ像も、この写真の上に外れた辺りに見えるが、眼を傷めるので、できるだけその像は見ないようにして欲しい。色分解された像でも、長時間見続けると眼を傷めると思うので、注意して欲しい。
太陽は見かけの大きさが小さいので、こんな簡単な方法でも比較的良好な波長分解が期待できる。しかし近くの人工光源はダメである。
上の写真には、明るい赤と緑の三日月形が少し重なって写っているが、本当は数本の円弧にならなければいけないはずである。基本的に鏡なので、上に見える色のついていない像の形が円弧状に引き伸ばされて、三日月形になってしまっているのだ。従って、鏡に映る光源を点か線に近づける必要がある。
改良版
分光分析ではスリットを使うのが一般的だが、もっと扱いやすいピンホールを使うことにした。光源とCDの間に、アルミホイルで作ったピンホールを置いてみた。
ピンホールの大きさは、直径約1mmだ。私の加工技術では、アルミホイルにこれよりも小さなピンホールをきれいな円形に開けることができなかったからである。もっと小さくても撮影には支障ないので、そうしたほうが波長分解能の点で有利だ。
左右にブレた様に見えるが、これはピンホールの像が円弧状に引き伸ばされた結果である。予想よりも波長分解能が良さそうだ。水銀や蛍光体の輝線が良く見えている。
写真には、緑色の点の上側に青~紫の点が3つ写っている(一番上の点は小さくて見づらい)が、肉眼では2つしか見えない。一番上の点は、紫外線の様である。
LED電球再登場
以上は今回話題にした100均の電球型蛍光灯の結果である。しかし、これだけで終わってしまうのはもったいない。
最も演色性能が良いと考えられる白熱電球、今回のサンプル、Panasonicブランドの電球型蛍光灯とLED電球、そして印象のよくないKFEのLED電球を並べてみた。全て電球色である。
できるだけ撮影条件が変わらないように注意したが、光源の交換に伴う若干の差異があると思う。また赤外~紫外の区分と位置合わせは「大体このくらい」なので、目安程度に考えて欲しい。また全てホワイトバランスを太陽光に固定して撮影を行った。
白熱電球の滑らかなパターンは、太陽光と同じ連続スペクトルであることの証だ。ただし、黒体輻射温度が太陽の約6,000Kに対して約2,500~2,800Kと低いので、青色の成分が少ない。
電球型蛍光灯はどちらも、蛍光灯に典型的な水銀の輝線+蛍光体の輝線+連続スペクトルになっている。両方とも良く似ているが細かく見ると、100均のものは緑の水銀の輝線に比べて他の成分がPanasonicよりも少ないような印象がある。蛍光体の違いだと思うが、露出の違いが影響している可能性も考えられる。仮に蛍光体の違いだったとしても、100均の商品の方が演色性能で劣っていると言いたいところだが、「違う」ということよりも踏み込むのは難しい。
LED電球はどちらも、青色LEDの光と赤~緑の連続スペクトルの光、つまり黄色蛍光体からの光が合わさったものであることが良くわかる。両者を比較すると、KFEの製品は青の光に対する黄色の光の強さが弱く、また黄色の色のバランスは赤色成分が少ないようだ。この辺がKFEの奇妙な色合いの原因だと思う。緑色の強い蛍光体を使うと全光束を稼げるので、色合いよりも明るさを優先したのだろう。また赤色の蛍光体はレアアースが必要だったりして高価であることが影響しているかもしれない。
まとめ
継続して使用する場合、明るさの違いまで考慮すると、100均の電球型蛍光灯は一流ブランド品より高くつく場合がある。これは重要な教訓だと思う。
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