デジタル一眼のOLPFはWebカメラには使えない

以前の記事に、天体改造したLogicool C920のIRカットフィルターについて「ジャンクのデジタルカメラから調達するのが一番安あがりかもしれない。」と書いた。でも、これはダメなんだよね。

一眼レフに限らず、デジタルカメラの画像センサーの前についているのは単なるIRカットフィルターではなくて、OLPF（Optical Low Pass Filter: 光学的ローパスフィルター）にIRカットコーティングをしたものだ。「カメラのキタムラ」で\1000のジャンクを見つけて「すいませ～ん、これお願いします」と言いそうになった時、その事に気付いた。

「もしかしたら安価な天文用フィルターがあるかもしれない」と思ってスターベース東京に向かって歩きながらも、「センサーから離して使えば影響ないんじゃあないか？」と言う可能性を考えていた。

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ジャンクデジ一のOLPF

今ジャンクで手に入るデジタル一眼は、ほとんどがAPS-Cに近い寸法で6M画素（3000x2000）の画像センサーを装備したものだ。OLPFは点像を、一辺がセンサーの画素ピッチ約8μmの正方形の頂点の位置に分配するようになっているはず。

点像と言っても実際はエアリーディスクだ。私の望遠鏡はF7.77なのでエアリーディスクの直径は約9.5μmである。これを8μm四方の頂点に置いて足し合わせた結果の明るさを擬似カラーで表示してみた。

上の星像が下のようになる？・・・こりゃダメだ。冷静に考えれば、レイリー限界よりも充分離れているので、こうなって当たり前である。Webカメラの画素ピッチが約2.1μmなので、擬似カラーにはならないけど、ちゃんと四重星のように写るはず。本当にこうなるか見てみたい気はするが、そのためだけにジャンクのデジ一をバラすのは気が進まない。多分、なんとか直して使う方向に流れてしまうだろう。

センサーから離したら？

対物レンズにごみがついていても、まず気づくことは無い。それと同じ事で、OLPFもセンサーから離して、例えば極端な話対物レンズの直後に入れたら効果が無くならないだろうかと考えた。しかし、どうもこれはダメらしい。

1つの恒星から来てレンズを出た光束は、焦点面の1点に収束する。これは幾何光学的な考え方だが、OLPFに関する限り大きな問題は無いと思う。で、OLPFが入ると、1点に収束するはずだった光束が4点に収束するようになる。これを、光束に属する全ての光線のコピーを4つ作ってその中心が画素ピッチだけ上下左右に離れるように配置し、元の光束を消すことだと考えると、レンズとセンサーの間のどこでやっても同じ結果になるはずだ。

で、IRカットフィルターはどうする

スターベースでBaader PlanetariumのUV-IRカットフィルターの2インチサイズが￥7800で出ていた。天文用のこの種のフィルターとしては最安に近い値段だが、このサイズは取り付ける場所が無いので諦めた。31.7mmサイズだったら買っていたかもしれない。それにしても天文用というだけで、なんでもずいぶん値が張るように思うが気のせいだろうか。同じメーカーのアイピースが中級コンパクトカメラよりも高いのはあまり納得できないが、売れる数が違うんだろうなと思うようにしている。

実際必要な大きさは10mm^□程度だろう。取り付けるための「のりしろ」みたいな部分が必要だとすると20mm^□位必要かもしれない。そう考えると、Baaderの2インチサイズを買って、フィルター本体をセルから取り出してガラス切りで切り分けたらどうか？最低2台分は採れそうだぞ、などと思ったりもするが、フィルターにWebカメラ本体よりも高い金額を払うのは気が引けるし、2台目以降を作る予定も無い。

探していると、工業用のサンプル的な製品で、比較的安価に入手できそうなものが見つかった。今手配をかけているので、結果が出たら報告しようと思っている。