BeagleBone Blackを試す (1)
11月初めにBBB (BeagleBone Black、以下同様)を買った。予め決まった使い道があったわけではないが、実現の可能性が低そうなものも含めいくつかアイデアがあり、どこまでできるか試してみることにした。
試していて気付いたことを記事にする。一回の記事にするには分量が多すぎると思うから、2~3回に分けることになるだろう。
去年登場したRaspberry Piには魅力を感じなかった。しかしBBBには一目ぼれした形である。今回はその辺の話から始め、Linuxなど他の環境で使う話やデスクトップの代わりに使えるか?について記事にする。
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Raspberry Piは...
プログラミング教育に利用されることを目的に開発された、との触れ込みである。周辺装置としてキーボードとマウス、そしてモニター(ビデオ入力のあるTVセットも可)をつないでプログラミングツールを動かす。つまり使い方はデスクトップコンピューターと同じである。
基本的な機能が一応そろったコンピューターとしては非常に小型で安価である。現在は4千円台前半 (2013/12/19現在) の値段だが、去年は円高だったからもっと安かったように記憶している。ただし動かすためには前述の周辺装置のほかに、この値段には入っていない電源アダプターとSDカードが別途必要である。モニターなどは手持ちのものを使うことにすれば6千円程度で済むだろう。
しかしクロック700MHzのARM11プロセッサーと256MB (初期の製品 -- 昨年10月以降の製品は512MBに増量) のRAMでは、最近のデスクトップと同じ使い勝手を望むのはかなり厳しい。当初予定された、またはそれに近い用途限定と考えたほうが良さそうである。
普通のデスクトップには無い機能として、17本のデジタルI/Oが利用できる。LEDを点滅させたりする以外に、UART・I2Cなどのシリアル通信やPWMとして構成することが可能だ。しかし私がこれらの機能を使うと考えた場合、もっと小規模なマイクロコントローラー、例えばMicrochip TechnologyのPIC18F系を普通のデスクトップコンピューターとシリアルかUSBで接続する方を選ぶだろう。これは私がPICのプログラミングに慣れていて、そうした方がI/O制御の自由度が高くなると思えるからだ。
Raspberry Piは小さくて安価なデスクトップコンピューターと考えるのは性能的に厳しい。しかしI/O制御は不自由である。従って私にとっては魅力が無い。
BBBは...
Raspberry Piとの比較はインターネット上に多数見つかるから、同じ事の繰り返しは省こう。私がBBBを魅力的だと感じた理由は以下の2点である。
- CPUとメモリーが高速で計算処理能力が高い
- 12bit ADコンバーター内蔵
計算処理能力はRaspberry Pi の約3倍、2年前のAndroidスマートフォンと同じ程度のはずだ。もしかしたら「小さくて安価なデスクトップ」にかなり近づけるのではないかと期待できる。ADCは内蔵でなくてもSPI経由などで外付け可能だが、その手間も費用も馬鹿にならない。内蔵されていれば配線するだけで定格1.5Vの乾電池の電圧が計れる。フルスケール1.8Vで分解能12bitは1mVよりも細かい違いが見分けられる。
特に魅力的だったのはADC内蔵だ。本気で乾電池の電圧を計るつもりは無いが、電圧を計れてLinuxが動いているコンピューターの使い道の二つや三つは直ぐに思い浮かぶ。SoCのデーターシートによればサンプルレートは最大200kspsまで可能である。ただしOSのインターフェイス経由だとこのサンプルレートは到底望めないが、それならどのくらいまで可能か試してみる価値がある。速いサンプルレートを狙っているのは、オーバーサンプリング状態にすると分解能の向上が図れるからである。
あまり話題にならない比較
BBBの基盤の造りはインテグレーションを考慮しているが、Raspberry Piはそうでないと思う。これはある程度実用的なプロジェクトに使おうとした場合、結構大きな差になると思うのだが、話題になっているのを見かけた記憶が無い。よく話題になるBBBの方がGPIOの本数が多いとか言った類の話ではない。
ある程度実用的なプロジェクトで基板をむき出しのまま使うことはあまり無いだろう。筐体に入れたままアクセスする必要のあるコネクターの配置を見てほしい。Raspberry Piでは基板の四辺に散らばっていて、これに合う筐体を独自に準備しようとすると複雑な構造が必要になる。また別の基板を隣接して配置するのが困難である。
一方BBBは対向する二辺にまとめられているので筐体に入れるのは比較的容易だ。欲を言えば一辺にまとめられているほうが良いのだが、基板のサイズを考えるとそれは無理な注文だろう。また別の基板を隣接して配置可能である。
さらにBBBのコネクター類は面 (ツラ) がほぼそろっているが、Raspberry Piにその配慮は無い。例えばUSB (host)コネクターはRJ45に比べて酷く飛び出しているし、SD cardの頭はmini USBコネクターに比べかなり飛び出すようになってしまっている。また基板を固定するためのネジ穴の配置もBBBは計画的だがRaspberry Piは成り行き任せのように思える。
ドーターボードをコネクターで直結する場合、BBBは始めからそのように設計されているので容易にピギーバック可能だ。しかしRaspberry Piはコネクターだけでドーターボードを支持できる構造になっていない。本体と同じ位置にネジ穴を明けて固定する必要があるだろう。
Raspberry Piは元々安価で小さい開発用コンピューターとして設計されているので、この様な比較は不本意だろう。しかし競合する価格帯に登場したBBBの方が組み込み用として優位であることは確かだ。
なお一品物のBBBのドーターボードを作る場合、秋月電子が出しているユニバーサルプロトケープが安価で使いやすそうである。回路規模が大きくて収まらない場合は、このプロトケープでフラットケーブルなどに中継してやるのが良さそうだ。
eMMC更新で起動時の挙動が変わる
BBBを手に入れて基本的な動作を確認したら、最初に行うのがeMMCに格納されているイメージを更新することである。実はここで使うイメージファイルの提供元が、私の知る範囲だけで二つある。
BBBに入っているドキュメントに従うとbeagleboard.orgがイメージを提供しているページに導かれる。もう一つはangstrom-distribution.orgである。前者がBBBの家元で、後者はÅngström Linuxの家元だと私は理解している。どちらかがもう一方のミラーだと最初は思っていた。それなら話はあまりややこしくないのだが、どうやら別々にイメージを管理しているらしい。
eMMC更新用イメージファイルの名前は「BBB-eMMC-flasher-yyyy.mm.dd.img.xz」の形式で「yyyy.mm.dd」の部分にイメージの作成日付が入いる。ある時点でbeagleboard.orgが提供しているものは2013.09.04だった。ちなみにbeagleboard.org は最新版と称する一つのバージョンしか提供していない。それに対してangstrom-distribution.orgは過去のバージョンも提供していて、beagleboard.orgの「最新版」と同じ日付のバージョンは無く、それに近いのは2013.08.22と2013.09.07だった。ファイルサイズも微妙に違う。またその時点の同サイト最新版は2013.09.12だ。
本当の最新版がどれなのか良くわからないが、Ångström Linuxに関しては気にする必要が無いだろう。eMMCの更新に使ったファイルがどれであってもopkg updateとopkg upgradeコマンドを実行すれば最新になるはずだからだ。ただしこの更新作業を行うと、Linuxの一部の重要な設定が変更されてしまう。この対処方法などは以下の書籍で解説されている。
私はKindle版を買って読んだ。ソフトウエアに関する内容は良いのだが、外付け回路は不適切なものが多いので注意して欲しい。これは後日記事にするつもりだ。
eMMCに入っているものの内、opkgコマンドでは更新できない主なものはu-boot環境とBBB固有アプリだろう。前者はそれ単独で更新することが可能であり、必要なら後から入れ替えられる。後者もそれだけを更新できないはずが無いと思うのだが、正式な方法が分らない。そう言う意味ではbeagleboard.orgが提供するイメージを使うほうが安心できるかもしれない。
私はbeagleboard.org版2013.09.04とangstrom-distribution.org版2013.09.12を試したが、分るほどの違いは無かった。
なお以上は全てÅngström Linux v2012.12に関するものである。より新しいv2013.06のイメージがangstrom-distribution.orgから提供されているが、未だ不安定なのか、beagleboard.orgからは提供されていない。
さて、ようやく本題である。eMMCを更新してしばらくして気付いたのだが、microSDカードを刺したまま起動すると、USER/BOOTボタンを押していなくてもmicroSDから起動するようになった。これはeMMC上のu-boot環境が変更されたためらしい。コチラのページの3つ目のセクション「Booting from SD」に「If you have not yet applied one of these images, you will need to hold down the uSD BOOT button (near the uSD slot) while powering-on the device to boot the BeagleBone Black from the external SD slot.」とあるので間違いないだろう。ちなみに「have not yet applied one of these images」の部分に下線が引かれているが、リンクにはなっていない。
常時microSDカードにインストールしたイメージで運用している場合、ボタンを押さなくてもmicroSDら起動してくれるのは嬉しい。当初は外付けハードウエアでこうなる設計だったが、u-boot環境の変更で対応するよう方針変更したようだ。またケープを装着するとBBB基板上のUSER/BOOTボタンにアクセスできなくなる事への対策かもしれない。ただしeMMCにOSとアプリをインストールしてmicroSDはデータ用に使う場合は、microSDを抜いて起動し、その後にmicroSDを刺す必要がある。そうしないと起動処理がu-bootで止まってしまう。以下はシリアルコンソールに表示されるメッセージである。
U-Boot SPL 2013.04-dirty (Jul 10 2013 - 14:02:53) (中略) Hit any key to stop autoboot: 0 gpio: pin 53 (gpio 53) value is 1 mmc0 is current device micro SD card found mmc0 is current device gpio: pin 54 (gpio 54) value is 1 SD/MMC found on device 0 reading uEnv.txt ← microSDから読もうとするが ** Unable to read file uEnv.txt ** ← 読めない gpio: pin 55 (gpio 55) value is 1 ** Invalid partition 2 ** ← 「microSDにrootファイルシステムが無い」と言う意味か? U-Boot# ← 入力待ち
これを回避するにはu-boot環境を当初設計の状態に修正する必要がある。eMMCの起動パーティションのuEnv.txtの修正、またはmicroSDにuEnv.txtを置く対策で済めば比較的簡単だ。しかしバイナリーファイルの修正が必要だと少々厄介である。ただいずれにせよmicroSDをデータ専用にする予定は無いので、実際にそれが必要になった時に考える宿題にしておこう。
ÅngströmのHDMIサポートがおかしい?
基本動作確認の一環でeMMCからÅngström Linuxを起動した時、画面が出なくて慌てた。この時使っていたのはLCDパネル解像度1920x1200のモニターである。HDMIコネクターのあるモニターが手元になかったのでDVI⇔HDMI変換コネクターを使っている。BBBとモニターのサポートしている解像度が合わない場合を考え、別のLCDパネル解像度1680x1050のモニターに替えて試しても画面が出ない。「初期不良? 面倒だな」との思いが頭をよぎる。気を取り直し検索してみたら、ココにこんなことが書いてあるのを見つけた。
Why does my monitor detect a signal on HDMI, but there is no picture?
It is asleep. As the RTC is not initialized it thinks it has been asleep for years when it gets the time from the time server when the Ethernet is connected.
Connect a keyboard or mouse to the board and move or type something. That will bring it out of sleep. Or, try not connecting the Ethernet cable.
If you are connected over serial or ssh you may enter "echo 0 > /sys/class/graphics/fb0/blank" to wake the screen up.(抄訳)
(訳注: 問) モニターがHDMIの信号を認識しているのに絵が出ないのはなぜ?(訳注: 答) スリープしているから。RTCが初期化されない(訳注: バッテリーバックアップされていないから正しい現在時刻を保持していない)から、EthernetがつながっているとNTPサーバーから時刻を取得した時点で何年もスリープしていると思い込む。キーボードかマウスをつないで動かすか何かタイプすれば目を覚ます。あるいはEthernetをつながなければいい。シリアルかSSHでコンソールをつないでいるなら「echo 0 > /sys/class/graphics/fb0/blank」で目を覚まさせることも可能。
マウスを動かしたら確かに画面が出た。理由が分ればなるほど、ではある。しかしこれは出来が悪い、と言うだけのような気がする。RTCが電源投入直後の状態なら、最初に取得した時刻を現在時刻とするようNTPクライアントを作れば済む話である。またディフォルトでスリープ機能を切っておくだけでも無用な混乱はかなり避けられる。
今度は大丈夫だろうと思いながら、元の1920x1200の方につないだ。あれ、マウスを動かしても画面が出ない。何でだろう??
ここで一つ気付いたことがある。Ångström Linuxが起動する時最初に表示する骨をくわえたビーグル犬のスプラッシュ画像はちゃんと出ているのだ。GUIはダメだけどテキストモードはOKと言う事か? 果たせるかな、Ctrl+Alt+F1を試すとtty1のログイン画面が出るではないか。1280x720、H:45kHz、V:60Hzでつながっている。
基本機能確認はハードウエアに関するものだから、この状態でOKにした。Ångström LinuxのXorgがサポートする画面解像度の設定か何かを修正する必要があるが、これはまた別の話である。実は直そうと思ってxorg.confを探したが、が見つからなかった。これも後日の宿題。
BBBはHDMI関係の問題を多く抱えているようだが、初期設定を見直すだけで解決するものが数多くありそうに思う。
キーボード配列変更できない??
この話題はBBBに直接つないだキーボードに関するものである。
私はJIS配列とASCII配列のタッチタイピングを使い分けられるほど器用ではないので、他は英語のままでも我慢するにせよ、言語依存関係で最優先に実施すべき項目である。
gnome (GUI) 環境はメニューから簡単に変更できるが、起動する都度USに戻ってしまうのでマウス操作で切り替える必要があるようだ。これはxkbmapコマンドで設定すれば解決すると言う情報を見かけたが、パッケージではなくソースからインストールしなければならないので未実施である。
更にテキストモード、これはCtrl+Alt+F1で呼び出す仮想端末のことだが、こちらのキーボード配列設定を変更する方法が全く見つからない!
この環境はめったに使わないが、逆に使わなければならないときはかなり切迫した状況である場合が多い。配列を変更できないのは将来に禍根を残すことになる。当面そう言う状況に遭わないことを祈るしかなさそうだ。
ちなみにUbuntuなど Debian系なら、テキストモードの仮想端末から
sudo dpkg-reconfigure console-data (またはkeyboard-configuration)
で変更できる。どちらのパッケージもディフォルトではインストールされていない場合 (例: Debian 7.3) もあるので、両方試してもダメな時はsudo apt-get install console-dataでインストールすればよいはずだ。
Ångström以外の環境を試す
Android、Debian、UbuntuおよびOSを使わない環境を試した結果を報告する。インストールの方法は、検索すれば日本語で紹介しているページが多数見つかると思うが、それらの原典と思われる英語のページを紹介しておく。基本的にファイルをダウンロード、解凍してmicroSDにコピーするのだが、私の知っているだけでもコピー方法の異なる2種類のイメージファイルが存在している。解凍してできたフォルダ内のインストーラーを実行してコピーするのと、解凍してできた単一のイメージファイルを丸ごとコピーする方法である。前者はLinuxだけでしか動かない (もしかするMacもOK?) が、Blackの付かないBeagleBoneやもっと古いBeagleBoardシリーズにも対応していて、さらに様々なサイズのmicroSDでもカード全体を利用するようにできている。GUI無しのLinuxなら1GBのmicroSDでも大丈夫だ。後者はWindowsでもWin32DiskImagerを使って実行することができるが、BBB専用であり、利用できるmicroSDも2GBまたは4GB専用となっている。ただし2GB用のイメージを4GB以上のサイズのmicroSDにコピーしたような場合でも、後で全体を利用するよう調整可能だ。
Android 4.2
http://elinux.org/Beagleboard:Android
上記URLが手順を解説したページへのリンクである。4GB microSD用イメージへのリンクは同ページから辿らないとダメなようだが、どこにあるか分り辛いので「download link」でページ内検索するのが良いだろう。正常に起動することを確認したが、マウス操作による使い方が良くわからないので、それ以上の確認はしていない。比較的動作は軽い。なお手順の中に「Some 4 GB may not have enough actual space, you may need to upgrade to an 8 GB card.」とあるのはその通りで、新たに準備するなら8GB、または予算と用途に応じてそれ以上のサイズのmicroSDがおススメである。試していないが、32GB超えのSDXCも条件付で使えるらしい。
Debian 7.2 および 7.3
http://elinux.org/BeagleBoardDebian
http://www.armhf.com/index.php/boards/beaglebone-black/
URLを二つ書いたが、後者はWindowsでも使えてeMMCにも書ける7.2のイメージのある場所だ。イメージをコピーしただけだとテキストモードのUIのみである。どちらのバージョンも特に気になる所はなく、サーバーとして使うならこれでよい。GUIは私の好みのxfce4をインストールしてみた。xfce4-goodiesもインストールしておけば通常必要になるツール類などは使える状態になる。主にWebサーフィンを試したが、若干もたつく感じはあるものの、文字と静止画のページは問題ないと思う。WebブラウザーはIceweaselである。FlashプレーヤーをインストールせずにYouTubeを観ると、3FPSくらいのカクカクではあるが、一応絵が動いているのが分った。ただしHDMI⇔DVI変換を使っているので音声は未確認。browser-plugin-gnash (GNU Shockwave Flash player) をインストールしてもYouTubeの状況は変化無く、それ以外に観られる動画はあまり増えなかった。1920x1200のモニターでも使えた。日本語化していないがWebブラウザーで日本語表示はOK。多国語対応フォントが標準でインストールされている模様。ただし漢字の字体は、いわゆる中華フォントである。
Ubuntu 12.04.3、13.04 および 13.10
http://elinux.org/BeagleBoardUbuntu
http://www.armhf.com/index.php/boards/beaglebone-black/
URLを二つ書いたが、後者はDebianの2番目のURLと同じである。12.04.3のWindowsでも使えるイメージは後者にしかない。前者で準備されているWindowsでも使えるイメージは13.10のみである。イメージをコピーしただけだとテキストモードのUIのみだ。これはDebianと同じ。どのバージョンも特に気になる所はなく、サーバーとして使うならこれでよいが、それなら特にUbuntuでなくても良いような気がする。GUIはxfce4、xubuntu-desktopおよびlxdeを試してみた。ただし全ての組み合わせを試したわけではない。Debianと同様に試そうとしたのだが、13.04と13.10はGUIでは以下のような不具合が出て解決できなかったため、Webブラウザーを起動するに至らなかった。
- 1920x1200のモニターでは画像が出ない
- 画面の同期が不安定 (頻繁に左右に揺れる)
- 壁紙の色が正しく表示されない
- 固まる
12.04.3では上記の不具合は無かったが、Debianに比べて動作が非常に重い。バックグラウンドで重いプロセスが多数動いているせいだと思う。Ubuntuそのものや何かアプリを起動した後、かなり長い時間CPU使用率が100%に張り付いている。YouTubeの動画再生をFirefoxとChromiumで試したが、前者は最初の場面が出るが動かず、後者は最初の場面も出ず、どちらもダメである。動画再生以前に、ページを表示した後かなり待たないとスクロールもままならない状況で、使い物になるとは言い難い。browser-plugin-gnashがインストール済だった。
OSを使わない環境 (TI StarterWare)
http://software-dl.ti.com/dsps/dsps_public_sw/am_bu/starterware/latest/index_FDS.html
OS無しでゼロから自力でCortex A8を使うのはほぼ不可能だ。しかし開発ツール付属のデモを動かすのは、時間はかかるが、ダウンロード・インストール・ビルドするだけなので試してみた。うまく行けばこれを出発点にして独自のプログラムを動かせる可能性が出てくる。しかし起動しない。さらに調べると、これはBlack無しのBeagleBone用なのでBBBで動かすにはMLOのソースを修正してビルドする必要があることが判明した。しかも「BBB用のuImageのソースの該当箇所を参考にして」的な説明しか見つからなかったので、今回は見送りとした。
日本語化した場合の注意
BBBに限ったことではないが、LinuxのGUIを日本語化するほとんどの場合、Linux全体ののロケール設定を変えていると思う。これだとテキストモードで表示するメッセージも日本語になる。しかしLinux標準のテキストモード仮想端末は漢字を含む日本語対応できない。フォントのグリフ数を512までしかサポートしていないのだ。
これ以降、Ubuntu 12.04.3に日本語設定のxubuntu-desktopをインストールした環境で試した結果を紹介する。Ctrl+Alt+F1で呼び出したコンソールを使っている。
この例ではdateコマンドの出力の「年」・「月」などが四角いトーフになってしまっている。この程度なら想像がつくが、長いメッセージを吐かれた時エラーなのか単なる「・・・を正常に実行しました」的内容なのか分らないから、これでは役に立たない。Linuxの出してくるメッセージが読めればよいのであれば、この例のように使う都度export LC_ALL=Cで対応可能である。LANG=Cではダメだった。ただし日本語の名前のファイルやディレクトリーにはさわれなくても構わない事が前提になる。これは緊急避難用だ。
根本的に対応するには仮想端末を日本語対応したものに入れ替える必要がある。fbtermと言うのがポピュラーらしい。Debian系にはパッケージが用意されているので早速インストールして動かしてみた。
インストールしたままだとrootユーザーでしか実行できないが、今回はこのまま試すことにした。非rootユーザーで実行するにはfbtermの実行ファイルにsetuid設定を行う必要がある (この辺の詳細はman fbtermのSECURITY NOTESに記載されている)。セキュリティ的に気持ちが悪いのであれば、fbtermを利用する非rootユーザーidをvideoグループのメンバーにすると、エラーは出るが一応動かすことはできるが、何か制約があるかもしれない。常用するのでなく一時的な利用に限るのであれば、いずれにせよ不安のある設定はせずにrootユーザーで動かすほうが良いのではないかと思う。
ディフォルトのフォントサイズ設定が小さ過ぎて正常に表示されないので、~/.fbtermrcを編集してfont-size=20にしている。反応は早く良好だ。
残念ながらÅngströmではfbtermパッケージは準備されていない模様である。
この状態は未だ日本語の入力ができない。つまり、これだと日本語の名前のファイルやディレクトリーの存在は分るがそれに対して操作できないから、実はあまり事態が改善していないのだ。マウスで文字列を選択してコピー/貼り付け、と行きたいところだが、コンソールではそれができない。コンソール用の日本語入力環境を整える必要がある。
パッケージuim-fepとuim-anthyをインストールし、設定ファイル/usr/share/uim/generic-key-custom.scmの末尾に以下の2行を追加する (これはLisp系の構文みたいだ)。
(define-key generic-off-key? '("<Control> "))
Ctrl+Spaceで日本語入力のOn/Offが可能だ。これ以外のキーの組み合わせでは日本語入力のOn/Off制御はうまく行かなかった。uim-fepの設定ファイルは予めShift+Spaceおよび半角/全角キーで日本語入力On/Offできるようになっているのだが、それぞれスペースとバッククオート文字の入力になってしまう。
写真の最下行はanthyの状態表示。その1行上は変換中である。uim-fepもfbtermもexitで終了しなければならない。つまりuim-fepが動いている状態からログアウトするには3回exitを入力することになる。
BBBは「小型で安価なデスクトップ」になり得るか?
最初にBBBを弁護しておく必要がある。BBBおよびBlackの付かないBeagleBone用カーネル3.8はSoC内蔵のGPU (リンク先でSGXと呼ばれているもの) をサポートしていない。サポートされた場合にどの程度の効果があるのか分らないが、もしGPUが「よく効く」場合だと描画のためのCPU負荷が1桁違ってもおかしくない。従って、このことは充分考慮する必要がある。
「Ångström以外の環境を試す」の所でほぼ結論が出ているが、Debian環境なら現状でデスクトップ (またはラップトップ) の代用として使えないことはないが、用途が限られる。少なくともインターネットの動画再生は無理だ。またUbuntuはあまり使い物にならない。
他のLinuxはデスクトップの解像度1280x720で試したが、Ångströmは異なるモニターでしかGUI画面を表示できないので解像度1680x1050で試してみた。ただし日本語をサポートするフォントをインストールしていない状態である。結果はDebianよりも若干重い印象だがUbuntuよりもはるかに快適だ。ただ実際に常用することを考えると、rootユーザーで使い続けるのは少し気持ち悪い。多くのWindows XPと同等の状態なのだが、Linuxは常時rootユーザーで使われることを想定して作られているとは思えないからだ。非rootユーザーを登録して試してみるべきなのは分っているが、Debianがいい感触なので、今回Ångströmについてはこれ以上深追いしないことにした。
色々なことを考えると、デスクトップはDebianで決まりだと思う。カーネルがSoC内蔵のGPUをサポートするようになれば結構実用になるのではないか、と楽観的に見ている。
ちゃんと動けばUbuntuの方がデスクトップとしては使い勝手が良いのだが、こう重いと使いものにならない。描画処理だけが重くなっている訳ではないので、GPUサポートが実現しても解決しないだろう。最近のUbuntu Desktopは色々と便利になって来たのと引き換えに、非力なハードウエアで動かすのが難しくなっている。XubuntuやLubuntuなど軽量化したものもメモリーの余裕に寄与するが、CPUが足りない状態は補いきれていない。
今回のまとめ
BBBの計算処理能力は2年位前のAndroidスマートフォン程度だが、それよりも高い画面解像度で使おうとすれば、しかもGPUサポート無しでなら、多少もっさりしているのは大目に見てやらなくてはならないだろう。ただし「多少」で済ませられる水準まであと一歩足りない。しかし、他力本願だが、改善の可能性はある。
次回はI/O関係、特にAD変換を試してみたいと思っている。
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この記事へのコメントは終了しました。
コメント
はじめまして。趣味でBBBを触っているものです。記事の内容大変参考になりました。
書籍について
>ソフトウエアに関する内容は良いのだが、外付け回路は不適切なものが多いので注意して欲しい。これは後日記事にするつもりだ。
と書かれていますが、どのような点でしょうか。
#記事の1~5まで拝見したのですが、見つけることが出来ませんでした
もしよかったら、どのあたりに注意が必要か教えていただけると助かります。 よろしくお願いいたします。
投稿: BBB newbie | 2014年2月21日 (金) 23時09分
BBB newbie さん、こんばんは。
ご指摘の件、ただいま準備中です。
明日くらいには公開できそうです。申し訳ありませんが、もう少しお待ちください。
投稿: エンジニア | 2014年2月21日 (金) 23時28分