LEDシーリングライトの省エネ・節電効果
ダイニングのシーリングライトをLEDに交換した話の続きである。
蛍光ランプからの交換なので消費電力はそんなに減らないだろう。しかし前回話題にした通りこの照明器具は毎日の点灯時間が長いから、消費電力の削減量が小さくてもある程度の効果が期待できるだろうと考え交換に踏み切ったのだが、これは誤った先入観だったことが判明した。
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先入観の原因
今まで使っていた蛍光ランプには「34ワット」および「27ワット」と表示されている。
合計61ワット。省エネ設定で使っていたので実際の消費電力は40W位だろうと思っていたが、これが違っていた。
シーリングライトの消費電力測定方法
ちゃんと測ろうとすると結構厄介である。今回は手っ取り早くクランプメーターで消費電流を測定した。
これならカバー(セード)を外せば器具を取り付けたまま測定できるが、電力値を得るためには電圧と力率の数値が必要だ。
電圧は測ることも可能だし、電熱器具など消費電力の多い器具は照明とは異なる分電盤の枝線で使うようにしているので、100Vに決め打ちしても大きな誤差は出ないはずだ。しかし力率は結果を見てつじつまの合いそうな値を推定するしかないから、電力はあくまで推定値である。有効数字1桁得られるかどうか、と言ったところだろう。
今回採用には至らなかったが、他のBlogなどで消費電力の測定によく使われているサンワサプライの「ワットチェッカー」を検討した。取説を見ると有効電力、皮相電力そして力率を測れるようだ。もっと安価な「ワットメーター」的製品は有効電力を正しく測っているかどうか怪しいのだが、これなら大丈夫だろう。ただいシーリングライトを取り付けたまま測るのは容易でない。以下のようなセットアップで、照明器具は取り外して測るのが良さそうである。
測ってビックリ
器具タイプ | 設定 | 消費電流 [A] |
---|---|---|
LED | 全灯 | 0.400 |
電球色(調光最大) | 0.183 | |
蛍光ランプ | 全灯 | 0.930 |
省エネ | 0.642 |
LEDシーリングライトHH-LC564Aの消費電力仕様は44Wだ。JIS C8150-3:2011によれば±20%の範囲に入っていればOKだから、入力電流0.400Aは力率がかなり高くてほとんど1.0だと考えれば妥当な値である。また電球色の場合明るさが50%なので、入力電流が約半分の0.183Aになるのもうなずける。しかし蛍光ランプの方の値は、最初の想定「全灯でランプ電力が61W」に比べて何かおかしい。
ベースとなる電源回路の一般論は以下の通りだ。
電源電圧100Vを仮定すると、負荷電力: 61W、入力電流: 0.930Aになるためには ηλ = 0.66 でなければならないが、これは低過ぎるんじゃあないだろうか。
器具仕様などを再確認
ラベルに「1x27w (38W), 1x34w (48W)」と書いてある。
カッコ内の表示は何だろう、と言うことで蛍光ランプのカタログを調べてみた。
定格点灯 | 高出力点灯 | |||||
---|---|---|---|---|---|---|
項目 | FHC27EL | FHC34EL | 合計 | FHC27EL | FHC34EL | 合計 |
定格ランプ電力 [W] | 27 | 34 | 61 | 38 | 48 | 86 |
全光束 (周囲温度=25℃) [lm] | 2560 | 3340 | 5900 | 3710 | 4840 | 8550 |
全光束 (周囲温度=35℃) [lm] | 2690 | 3500 | 6190 | 3730 | 4870 | 8600 |
定格寿命 [h] | 19000 | 19000 | - | 19000 | 19000 | - |
東芝FAQによれば、高周波点灯専用蛍光ランプ (FHC) は「定格点灯」と「高出力点灯」の2つの点灯モードが可能なインバーター専用ランプだ、と言うこと。つまり器具の設定が「省エネ」の時「定格点灯」でランプの消費電力が61W、「全灯」の時が「高出力点灯」で86Wである。
なるほど、「省エネ」設定の時は力率が1.0に近く器具の消費電力は約64W、「全灯」設定だと力率が多少下がって約90W消費していると考えるのが妥当なようだ。
しかし「定格」の上に「高出力点灯」モードがあると言うのは違和感がある。カタログを見る限り「高出力点灯」でも「定格寿命」は19000時間で、「定格点灯」と変わらない様だ。
省エネ・節電効果の見積もり
- 取り換え前の消費電力: 「省エネ」設定で約64W
- 取り換え後の消費電力: 「電球色」設定で約18W
消費電力が1/3以下になり、約46Wの省エネ・節電である。これは電球色設定のLEDシーリングライトを2台余分に、また全灯設定でも1台余分に使ってもまだ節電になるのだから、かなり大きな効果があると言える。
金額に換算すると、
- 毎日10時間点灯
- 電気料金単価: 29.93\/kWh (TEPCO 従量電灯B第三段階料金: 2014/5/17現在)
- 電気料金の節約 = 29.93 x 46 x 10 x 365 ÷ 1000 = 5025.247 ≑ \5,000/年
今回は蛍光ランプ(約\2,500) の代わりにLEDシーリングライト (約\10,000) を買ったので、その差額\7,500は1年半で回収できることになる。
蛍光ランプはシーリングライトに不向きな光源
蛍光ランプ方式からLEDシーリングライトに交換した場合の消費電力削減はかなり大きい。電球型蛍光灯とLED電球ではあまり大きな差がはなかったのと比べると意外である。その原因として考えられるのが、LED光源の配光はシーリングライトに向いているが蛍光灯ランプはそうではない、と言うことだ。
下の図は蛍光ランプ方式とLEDシーリングライトおよびそれらの光源単体について、真下の明るさを100とした相対配光曲線である。
LEDシーリングライトLEDH94035-LCおよび蛍光灯シーリングライトFVH20510SELの配光曲線は東芝ライテック(株)の照明器具データベースで入手した「配光データ」に基づく。それぞれ光源単体の配光曲線は幾何学的形状から計算したものである。
光源がLEDでも蛍光ランプでもシーリングライトの配光曲線はほとんど違わない。またLED光源は器具としてのシーリングライトとほとんど同じ配光曲線になっているので、器具による損失は最小限で済むと容易に想像できる。それに対して蛍光ランプはウラ表が無いので天井方向にも下方向と同じように光を放っている。また横方向への配光も多い。反射板などで有効利用しつつ配光を合わせようとするには限界があり、器具による損失が大きい。
東芝ライテック(株)の「配光データ」に記載された器具効率を見ても、蛍光ランプの光はかなり無駄に捨てられていることが分かる。
光源種類 | 器具光束 [lm] | 光源光束 [lm] | 器具効率 [%] |
---|---|---|---|
LED (LEDH94035-LC) | 3300 | 4180 | 79 |
蛍光ランプ (FVH20510SEL) | 5634 | 9830 | 57 |
今回のまとめ
LED光源で一般白熱電球と同じような配光を実現しようとするとかなり凝った構造が必要になったが、シーリングライトに使うには元々適した配光特性だったと言える。蛍光ランプはそれとは逆にシーリングライトには不向きな配光特性である。そのため蛍光灯シーリングライトをLEDで置き換えた場合、大きな消費電力削減を期待できる。
しばらく前まで蛍光ランプ以外の光源を使うシーリングライトはほとんど考えられなかったが、今後LED光源以外はほとんど使われなくなりそうである。
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