冷蔵庫の電気代
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現用機のカタログ・スペック
冷蔵庫本体に表示されているはずなのだが、簡単には見つからなかったので取扱説明書などから書き写した。
項目 | 仕様 | 単位 |
---|---|---|
型番 | 三菱 MR-C39A-CS | |
内容積 | 385 | L |
コンプレッサー | 122 (50Hz)/133 (60Hz) | W |
霜取りヒーター | 154 (50Hz)/154 (60Hz) | W |
消費電力 | 55 (50Hz)/55 (60Hz) | kWh/月 |
「消費電力」と表示された数字が今回調べようとしているものだ。
この冷蔵庫は1994年の製品で、当時の「消費電力」は測定条件が非現実的で「60km/h定地燃費」のようなものだった。通常の使い方をした場合の消費電力はこの数字をかなり上回る。従って、この点に関してカタログ・スペックはあまり参考にならない。
消費電力の測定方法はJISで定められているのだが、冷蔵庫のカタログ・スペックに適用する規定は過去20年間に4回改訂または変更されている。
JIS規格タイトル | 適用規定 | 時期 |
---|---|---|
電気冷蔵庫及び電気冷凍庫 | JIS C 9607 A方式 | 1994年9月以前 |
JIS C 9607 A方式 | 1994年10月~1999年2月 | |
家庭用電気冷蔵庫及び電気冷凍庫の特性及び試験方法 | JIS C 9801 | 1999年3月~2006年4月 |
JIS C 9801:2006 | 2006年5月以降 |
現在売られている冷蔵庫は現実に即した測定方法が適用されているとの事なので、カタログ値をもとに評価しても問題なさそうだ。買い換え対象となる400Lクラスの場合、多くのの製品が200~270kWh/年の範囲に入っている。代表値として240kWh/年 = 20kWh/月を想定すれば良いだろう。現用機のカタログ・スペックとの比較しても半分以下である。
ただし過去の改訂サイクルが5~7年であることを考えると、そろそろ現実とのかい離が出てもおかしくない時期なので注意する必要がありそうだ。
実測例
カタログ値が当てにならないのなら実測するしかないのだが、調べていたら私がやろうとしている事をすでに実施した例が見つかった。冷蔵庫の型番 MR-C39A-CSでGoogle検索するとトップに表示されるblog記事である。コチラの型番はMR-C39A-AHだが、末尾2文字は色の違いだと思われる。
測定結果は4.92kWh/日、1か月 = 30日とすると147.6kWh/月だ。買い換え対象製品の想定値の7倍以上なのでかなりの電気代節約になりそうだが、ちょっと引っかかるものがある。
4.92kWh/日と言うことは平均200W以上の電力を消費していなければならないが、コンプレッサーの定格電力133W (中部電力管内なので60Hz地域) に比べてかなり大きい。もちろん冷気循環用ファン、結露防止や凍結防止用のヒーターなどコンプレッサー以外の電力消費もあるが、これらの合計が67Wを超えるとはあまり考えられない。仮にそうだったとしても、コンプレッサーを含むそれら全てが連続運転しないと平均200Wにはならないが、少なくともコンプレッサーは断続運転するはずである。
なお霜取りヒーターは、正常に制御されているなら断続的にかなり短時間働くようになっていたはずだ。時間割合にして1/10以下ではないか。また霜取りヒーターが働く時はコンプレッサーを止めるので、消費電力の増加に対する寄与はかなり限定的だ。
こうなると自分で測ってみる以外に方法は無さそうである。
クランプメーターでは歯が立たない
従来クランプメーターで消費電流を測り、その値から消費電力を推定していた。
しかし冷蔵庫に対して、この方法は全く不適当である。
今までこの方法を使ってきた照明器具などは利用者が設定した使用条件と消費電力にほぼ完全な対応関係があったから、それぞれの使用条件ごとの消費電力と想定した使用パターンから消費電力量を推定することが可能だった。しかし冷蔵庫のように自動制御されている製品の消費電力変化パターンは予測できないからである。つまり消費電力を連続測定して積算する以外に方法は無い。
このことを口実にワットチェッカーを買うことにした。
どうせ買うなら有効電力と皮相電力をちゃんと測れる物を選びたかったのだが、この製品は力率の測定誤差0.03以下を謳っているので大丈夫だと判断した。ちなみにこれは台湾 博計電子服份有限公司 (Prodigit Electronics Co., Ltd) が製造した製品だと思われる。
経時列変化を見られる、コンピューターに接続する方式の製品も検討したが、
この製品は測定項目が電力、気温、湿度、および照度で、皮相電力や電圧・電流は測れない。また電力は有効電力をちゃんと測っているかどうか不明だ。従って不採用。
コチラの製品も皮相電力は測れないが、電圧と電流は測れるので、それらから計算することは可能である。ただし正しく有効電力を測定しているか、電流は真のRMSなのか不明である。また若干高価なうえ未発売だったので見送りとした。
どちらの製品も消費電力の相対的な経時変化を見る目的には良いのかもしれない。電圧・電流を測らないなら安価な前者の製品で良いだろう。また前者の製品はBluetooth通信メッセージが公開されているので好きなプラットフォーム上に独自のアプリを構築することも可能である。
測定結果
連続4日間 (96時間: 7月3~7日) 測定を行った。室温は概ね25℃である。
項目 | 値 | 単位 |
---|---|---|
測定期間 | 96 | 時間 |
積算電力 | 9.39 | kWh |
消費電力 | 2.35 | kWh/日 |
70.4 | kWh/30日 | |
857 | kWh/365日 | |
平均消費電力 | 97.8 | W |
カタログ値の128%。平均消費電力97.8Wは納得できる値である。コンプレッサー動作中の消費電力は141Wだった。
消費電力240kWh/年の製品に買い換えた場合を想定し、TEPCOの従量単価約\30/kWhを使って計算した電気代比較は以下のとおりである。
現状 | 買い替え後 | 節約 | 単位 | ||
---|---|---|---|---|---|
月間 | 消費電力 | 70.4 | 20 | 50.4 | [kWh/月] |
電気代 | 2,113 | 600 | 1,513 | [\/月] | |
年間 | 消費電力 | 857 | 240 | 617 | [kWh/年] |
電気代 | 25,705 | 7,200 | 18,505 | [\/年] |
冷蔵庫を買い換えると年間約1万8千円の電気代節約が見込める。これはかなり魅力的だ。以下のような前提で経済性を考えると、
- 冷蔵庫の買い替えに必要な費用は今後数年間は20万円で変わらない
- ケース1: ただちに買い換える
- ケース2: 20万円を何かに投資し、冷蔵庫の買い替えが必要になった時換金する
トントンかケース2が有利になるには、ケース2で行う投資の年間利回り9%以上が必要だ。しかしそんなうまい話は今時そうざらにはない。おいしい儲け話があるなら別だが、冷蔵庫の買い替えを先送りする理由は無い。
今回のまとめ
古い家電製品は意外と多くの電力を消費している場合がある。これは実測してはじめて気づく場合もありそうだ。
多量に電力消費する古い家電製品は、可能なら捨ててしまうのが一番である。今後ともその機能が必要でいずれ買い替えるつもりなら、ただちに買い換えたほうが経済的な場合が多いかもしれない。
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