クランプメーターによる測定値の正確さ
ワットチェッカー導入前はクランプメーターで測定した消費電流から消費電力を推定していた。使っていたクランプメーターは安価な製品で真の rms を測っていないことは分かっていたが、それがどんな差異を与えているか推測するしかなかった。
今回はワットチェッカーと比較してみた。また電流波形を得るために自作中の「ワットチェッカー的なもの」による測定も併用した。
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とりあえず比べてみる
真の rms 値を測っていないことの影響が大きいのは電流波形に歪がある場合だ。最近の家電製品で電流波形に歪が無く位相の遅れ進みで力率が大幅に小さくなっているようなものは稀で、波形歪による影響の場合が多い。波形歪のある電気器具の代表として、今回は定格消費電力 10W の LED 電球、およびノート PC に AC アダプターで給電する場合を選んだ。
| 計測方法 | 項目 | LED 電球 | ノート PC | 単位 |
|---|---|---|---|---|
| クランプメーター | 電流 | 0.097 | 0.332 | A (rms?) |
| ワットチェッカー | 電流 | 0.15 | 0.54 | Arms |
| 電圧 | 103.0 | 102.8 | Vrms | |
| 皮相電力 | 15 | 55 | VA | |
| 有効電力 | 10 | 35 | W | |
| 力率 | 0.67 | 0.64 | - |
予想していたことだがクランプメーターは真の rms よりもかなり小さな値を示している。しかも有効電力を電圧で割った値、すなわち力率が 1.0 だったとした時の電流値に近くなっている。これが元で以前の記事にトンチンカンなことをずいぶん書いたような気がする。
クランプメーターの測定方式
クランプメーターは電流を電圧に変換した後、絶対値の平均にある係数を掛けた値を表示しているはずだ。この「ある係数」は正弦波を測った時に rms 値表示になるものである。
正弦波の場合、平均値と rms はそれぞれ以下のとおりなので、
rms = [(1/π)∫0π sin2(θ) dθ]1/2 = (1/2)1/2
「ある係数」は、
である。
実際の電流波形
PC オーディオを利用した「ワットチェッカー的なもの」を使って波形サンプルをプロットしてみた。なお電流の値は大まかに合わせた係数を使って計算しているので、相対的な大小関係は正しいが絶対的な値はあまり正確ではない。
電流の rms 値と平均値を波形から計算して表示しておいた。平均値からクランプメーターが表示するはずの電流値を計算すると LED 電球は 0.100、ノート PC では 0.324 で、rms 値との関係が最初に示した表とほとんど同じになっている。
電流波形を見て気付くのはどちらも同じような三角形になっていることだ。これは商用電源を直接ダイオード・ブリッジで整流・平滑している電源回路に特徴的なものである。
これは LED 電球を模したシミュレーション・モデルで、これを実行すると実測と良く似た電流波形が得られる。
最初の半サイクルは手動で設定している初期値の影響を受けるのでシミュレーション結果を正しく反映していない。この点、注意が必要である。シミュレーション結果の2サイクル目のデータから電流値などを計算してまとめると以下の通りになる。
| 電流 (rms) | 0.159 | Arms |
|---|---|---|
| 電流 (平均) | 0.079 | A |
| 電圧 | 100.0 | Vrms |
| 皮相電力 | 15.9 | VA |
| 有効電力 | 9.7 | W |
| 力率 | 0.61 | - |
実際の回路より力率が小さくなっているが、平滑コンデンサーの ESR など損失要素を省いたのが原因ではないかと思う。また rms 値と平均値の違いが大きくなっているのも同じ原因が考えられる。このことを除けば、このモデルは実際の回路の状況を良く表していると言えそうだ。
平均値方式の電流測定値に関する考慮点
波形歪のある電流を平均値方式のクランプメーターで測ると通常マイナスの誤差が出る。またこの場合力率が 1 よりも小さいから有効電力を電圧で割った値が平均値方式クランプメーターの読み取り値に近づく傾向になる。ただし「近づく」だけで特定の相関関係がある訳ではないので、残念ながら何の役にも立たない。
平均値方式の電流測定値にプラス誤差が出る場合が無いわけではない。電流波形が矩形波に近い場合だ。完全に矩形波ならピーク値、平均値、そして rms 値全てが同じになる。しかし平均値方式では正弦波の rms 値に合わせる係数の影響でプラス 11% の誤差が出る。ただし実際に電流波形が矩形波に近くなることはあまり考えられない。ほとんどあり得ないのではないかと思う。
電流波形が似ているもの同士なら、クランプメーターの読み取り値で相対的な消費電力の大小をある程度判断できる。これは正しい。しかし「電流波形が似ているもの同士」だと推定するのは簡単ではない。
これは 4年以上前の記事でフリッカーがあることを指摘したシャープ製 LED 電球の電流波形である。平滑用コンデンサーが足りないのだろう位に思っていたのだが、これを見るとそんな単純なことではない様だ。同じ LED 電球同士なので電流波形も似ているだろうと思ったら大間違い、の例である。この製品、力率は 0.84 と優秀だ。
今回のまとめ
平均値方式のクランプメーターで消費電力を調べようとするのはかなり無理がある。電流と電圧波形の位相差まで考えると真の rms が測れても十分ではない。しかし回路を切らずに電流を測れるのは便利だ。消費電流、あるいは消費電力を調べたいが使えるのが唯一クランプメーターと言う場合も少なくない。制約事項を理解して活用する、これに尽きるのではないだろうか。
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