行政

2010年2月 5日 (金)

ミスを赦さない国、ニッポン

体調を崩し気力も体力も萎えてしまいblogをお休みしている間に、民主党政権が日本にも誕生し、’00年代が終わり、年が変わって’10年代が始まり、もう1か月以上経過して暦の上では春になってしまった。啓蟄には未だ間があるが、目覚めることにしよう。

この国で、普通選挙で政権が交代したのは初めてらしい。この国の在り方を変えたいとの思いが国民の大半に及んだのか、単に前政権に嫌気がさして目先を変えてみただけなのか、(私は前者だと思いたいが)いずれにせよ国民の総意が何らかの「変化」を選んだ。総体としての日本国民のものの考え方(国民性とか民族性といった言葉があるが、個性を否定しているように感じられるので、あまり適当でないかもしれないが「社会風土」を用いる)が少し変わったことの現われだろう。しかし、「国の在り方を変える」・「嫌気がさした」、どちらであっても表面の薄皮1枚変わった程度で、根本的な部分はそうやすやすとは変わらないと思う。「国の在り方を変える」のであれば、その根本的な部分をこれから変えていかなければならない。

今回のテーマは、ぜひ変わって欲しいと私が思っていることの一つである。 きっかけは、2010年2月2日の朝日新聞東京本社版朝刊に載った「新幹線事故は整備ミス(パンタグラフ/ボルト付け忘れ)」(1面)・「単純ミス防げず(新幹線事故/主任も見逃し/点検用紙なし)」(30面)と大見出しをつけられた(カッコ内は小見出し)記事である。新聞ほか諸々のマスメディアは社会風土を映す鏡であると同時に、社会風土に影響を与えて変化を起こす、または現在の社会風土を強化する働きがある。私の意見では、今回の記事は全体としては本来あるべき姿にまとまっているようだが、実は端々に改めるべき社会風土を強化するような表現が埋め込まれている。恐らくそうではないだろうが、もし意図的だとしたらサブリミナル効果を狙ったようなもので極めて悪質だ。

予めお断りしておくが、「言葉尻を・・・」の表現を否定的な意味によく用いる人は、この先を読まないことをお勧めする。私は、神にせよ悪魔にせよ、重要なことは細部に宿ると固く信じているので。

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2009年8月27日 (木)

中学生のアイデアに脱帽

以前の当blog記事『「静か過ぎるハイブリッド車に音出し装置」議論を嗤う』の続編になるが、コレには正直参った。

車速に応じて音の調子も変わるし、一定速度(20km/h)以上で音が止まるなど、望ましいと思われる要件を満たす中では、最もシンプルな仕組みではないだろうか。

多少課題はあるものの、克服はそんなに難しくないだろう。量産化されれば、コストパフォーマンスは最高になること間違いないので、早く製品化してデファクトスタンダードにしてしまう戦略がベストではないかと思う。

実に分かりやすいニュースだ。

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訳の分からないニュース

日本の経済人は、この程度のニュースを見て「スゴイ」と驚いたり、「へー」と納得したりするのだろうか。もしそうであれば、このこと自体、そして記事に書かれた内容は、日本の経済人の大半がビジネスプロセスを素早く把握する能力に欠けている事を示しているように思える。

問題のニュースは、日経のWeb版、IT+PLUSに掲載されていた有賀 貞一 (あるが ていいち) による8月26日11:16の記事『「エコポイント」の情報システムがわずか3週間で完成した理由』である。

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2009年8月21日 (金)

農業、エコ、観光、司法と法律、そして政治(選挙)

昨日2009年8月20日の朝日新聞朝刊第17面のOpinion(オピニオン)欄に4つの「私の視点」が掲載されていたが、根底に共通するものがあるように思えた。

総選挙告示から3日目のこの時期に、この欄の担当者はそれを意図して掲載したのだろうか。私の、偏見に満ちた感想を紹介しよう。

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2009年8月15日 (土)

「静か過ぎるハイブリッド車に音出し装置」議論を嗤う

2009年8月13日の朝日新聞朝刊第11面・『声』(読者の投稿)欄に、中村哲也と言う人が以下のような投稿をしている。

『HVの音より まず法律守れ』
モーターで動くハイブリッド車(HV)が視覚障害者には静かすぎて危険なため音が必要との議論や対応策の取り組みが始まった。しかし、前提が違いはしないか。自動車が歩行者をないがしろにするような違法状態の解消を忘れていることが気になる。(以下略)

一つの正論だろう。『静かすぎるから音を出せ』と言う発想に基づきチャイムのような音を鳴らすのは、ベルを鳴らしながら歩行者を蹴散らすように歩道上を走る自転車を連想させ、滑稽である。

滑稽さの背景は、この件は最適な解(ソリューション)を含め、米国では一定の方向性が既に出ている事である。

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2009年8月11日 (火)

今更・・・地デジに釣られた

この秋井貴彦によるココログニュース「民放テレビ、実は国営?」に釣られたようだ。

通常、この種の記事はthruしているのだが、余りの認識の低さに目をとめてしまった。

「秋井貴彦」で検索したら、以前にも同じようなことをしているようだ。この時はライブドアだったが、今回は個人が書いている「はてな」blogの単一記事のみ引用に基づく記事である。

察するところ、秋井貴彦と言う男は「こんな面白いblog記事を見つけました」的な記事を書くのが得意なのだろう。
あるいは、TV等放送メディアでお笑い芸人と同列に扱われている程度の「言論人」に成る事を夢見ているのかもしれない。

少なくとも、欠落している事実関係は補っておこう。

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2009年8月 2日 (日)

ITブルーカラー受難の日

『「エンジニア」==「技術者」?』の続きだ。「ITブルーカラー」は私の造語で、ピンからキリまであるIT技術者の内で「キリ」の部分に属する諸君のことである。

誤解を避けるため予め断っておくが、「ピンからキリ」とか、「上下」などの表現は主に給与水準の観点からである。給与水準に大きな格差があるのは事実だ。ただし、私は給与水準と人の貴賎に特定の相関関係があると思っているわけではない。

かつてITと言う略語が未だ無かったころ、今のIT技術者に相当する人々は需要過多の、末端価格の高い社会的希少資源だった。今ではコンピューターとインターネットの家庭への普及に従い、IT技術者コミュニティへの参入障壁が低くなり末端価格が低下しそうなものだが、昨今の勤労者平均年収の下落に比べれば比較的高い水準を保っているような印象を受ける。これはあくまで末端価格の話だ。

しかしながら、上記とは裏腹に、IT技術者の最低給与水準は世間並みに落ち込んでいるのではないだろうか。もちろん、製造業に非正規雇用されていた諸君に比べればかなりマシなはずではある。そうは言っても、末端価格と給与レベルのギャップは構造的中間搾取の存在を示唆するものだ。

更に悪い事に、私がITブルーカラーと呼ぶ諸君の上に、製造業非正規雇用者だった諸君の身に今起こっているような事が降りかかる可能性がある。

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2009年7月16日 (木)

レセプト(診療報酬請求書)オンライン化の裏に見えてきたもの

推進・延期・凍結など、色んな人による色んな趣旨の発言が世間を賑わせている。
本件含む諸々の医療制度「改革」の根拠は、厚生/厚労省の省令や局長通達である。すなわち官僚が準備し、政府与党がお墨付きを与えたものであって、国会で審議されたものではなかったはずだ。
時間の問題となった総選挙では、官僚(行政)と国会の役割分担「正常化」に関することが争点の1つになるのは間違いない。医師会票は欲しいが一般有権者票も気になる立候補予定者たちは、これらの発言に耳を貸さざるを得ないだろう。

そんな中、朝日新聞2009年(平成21年)7月11日朝刊のオピニオン面・私の視点欄に、整形外科医・大竹進(おおたけすすむ)が「医療レセプト IT化凍結し情報漏出防げ」と題して投稿した内容に、少なからぬ衝撃を受けた。曰く;

・・・保険者に加え国の「データベースシステム」にも蓄積される。さらに保存期間が延長され、一生涯の個人の歴史が保存される予定だ。・・・

全く初耳である。

一般論として、暗号化などで適切に保護された情報がオンライン伝送中に第三者に漏れてしまうリスクはかなり低い。また万一漏れたとしても、1回の伝送情報全体が量的な上限になるので、インパクト(被害)は限定的だろう。
それに比べ、蓄積された情報が一旦漏出してしまうと、相当大きなインパクトを覚悟しなければならない。漏出するのはまとまった量の、完全な情報セットになるのが自然だからだ。ただし、内部の協力者なしに漏出が起こることはほとんど考えられないので瞬間々々のリスクは低いが、想定保存期間が数十年に及ぶので過小評価すべきではない。

一通り調べたところ、大竹の主張とは逆に、以下のような感触を得た。

  • 現在の国民皆保険制度を維持するなら、データベースの情報は経済的価値がほとんど無いので、金銭目当ての漏出は考えにくい。
  • 少なくとも1つ、多くの国民が利益を享受できる具体的なデータベース利用案が存在している。
  • 万一情報が漏出すれば不愉快に思う人は必ず居るのだから、それを防ぐのに必要な費用は前項などで得られる利益よりも十分小さくなくてはならない。
  • データベース化は実現に向け、その目的・情報の保護に関する施策と費用の裏づけなどの、国民的議論を精力的に進めるべきだ。

レセプトオンライン化そのものの是非に関わる知見も得られたが、この議論は本質的に政治的権力闘争なので、ここでは論評を避ける。(「続き」で若干触れる)

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